あじこらぼ × SNDJ プロのためのアミノ酸実践講座
第3回 免疫とアミノ酸(シスチン・テアニン)
4. 癌治療の支持療法としてのシスチン・テアニン
梶原 賢太(味の素株式会社アミノサイエンス事業本部)
【聞き手】鈴木 志保子 先生(一般社団法人日本スポーツ栄養協会 理事長)
2023年2月からスタートした「あじこらぼ」(味の素株式会社)と一般社団法人日本スポーツ栄養協会(SNDJ)による「プロのためのアミノ酸実践講座」。その第3回が2023年12月15日にオンラインで開催されました。第3回のテーマは「免疫とアミノ酸(シスチン・テアニン)」。新型コロナウイルス禍を経てインフルエンザが毎年流行する昨今は、免疫に対する人々の認識も高まっています。こんな時代だからこそ、免疫について考えるこのセミナーの模様をレビュー記事としてお届けします。
全5回の連載の第4回は、梶原賢太氏による講義「癌治療の支持療法としてのシスチン・テアニン」です。
演者:梶原 賢太(味の素株式会社アミノサイエンス事業本部)
Profile ▶
演題:4. 癌治療の支持療法としてのシスチン・テアニン
初出:あじこらぼ × SNDJ プロのためのアミノ酸実践講座 第3回 免疫とアミノ酸(シスチン・テアニン)
開催日・場所:2023年12月15日/オンライン
癌治療の支持療法としてのシスチン・テアニン
最後のトピックは、シスチン・テアニンを介した、癌化学療法時の副作用の軽減についてです。癌の治療には、手術、化学療法、放射線、そして緩和ケアなどがありますが、シスチン・テアニンはそれらすべてに対して支持的に働くことを示すエビデンスがあります。今回はそれらの中から化学療法の話をいたします。仙台オープン病院の土屋誉先生との共同研究で2014年に報告いたしました。
どんな研究かといいますと、大腸癌や胃癌のR0手術後の補助化学療法、つまり、肉眼的・組織学的に腫瘍を完全に切除したと判断されるものの、体内のどこかにまだ残っていて後の再発や転移のリスクとなるかもしれない癌細胞を叩くために行う抗癌剤治療において、シスチン・テアニンの有用性を探る研究です。抗癌剤治療に伴い副作用が発生すると、予定していた治療を完遂できないということが起きますので、それをシスチン・テアニンで回避できないかということです(図1)。
図1 抗癌剤治療におけるシスチン・テアニンの有用性を探る研究【対象】
(土屋 誉ら:アミノ酸シスチン・テアニンの経口投与は抗癌剤TS-1の副作用軽減効果を有する. 外科と代謝・栄養. 48巻5号. P. 56. 2014年06月15日)
試験デザインなどの解説は省き結論だけお示ししますが、まず、Grade2以上、つまり日常生活に影響を及ぼし得る副作用の発現頻度をみますと、すべてにおいてシスチン・テアニン摂取群が少なく下痢と倦怠感については有意差が生じていました(図2)。
図2 抗癌剤治療におけるシスチン・テアニンの有用性を探る研究【副作用発現率】
(土屋 誉ら:アミノ酸シスチン・テアニンの経口投与は抗癌剤TS-1の副作用軽減効果を有する. 外科と代謝・栄養. 48巻5号. P. 56. 2014年06月15日)
その結果として、とくに重要な指標である治療完遂率にも差が生じ、対照群は35.5%であるのに対してシスチン・テアニン摂取群は75.0%に上りました。このデータは2014年に学会で報告し、2016年に論文化しています(図3)。
図3 抗癌剤治療におけるシスチン・テアニンの有用性を探る研究【TS-1の1クール完遂率】
(土屋 誉ら:アミノ酸シスチン・テアニンの経口投与は抗癌剤TS-1の副作用軽減効果を有する. 外科と代謝・栄養. 48巻5号. P. 56. 2014年06月15日)
抗癌剤治療の支持療法としてのエビデンスはこれだけにとどまらず、さまざまな抗癌剤に関して有用性が示され、いずれも論文化されています(図4)。
図4 シスチン・テアニンによる抗癌剤副作用の軽減効果
これが最後のスライド(図5)ですが、シスチン・テアニンを摂取することで、体内でグルタチオンが産生されることを介して免疫機能が維持され、風邪予防、ワクチン接種効果の増強、抗癌剤副作用軽減など、さまざまな生理作用が発現されるというお話をさせていただきました。
図5 アミノ酸 シスチン・テアニンの免疫への作用まとめ
鈴木先生 ありがとうございます。抗癌剤治療を受ける患者さんにとって、副作用のために予定していた治療を行えなくなるというのが非常に切実な問題であることは想像に難くありません。そのような深刻なケースにも、シスチン・テアニンというアイテムを使い、管理栄養士としてできることがあるのだということがよくわかりました。
Profile
梶原 賢太(かじわら けんた)
味の素株式会社アミノサイエンス事業本部
1991年4月 味の素株式会社入社。中央研究所・生物科学研究所に配属。アミノ酸の生理作用とアミノ酸を応用した医薬品開発に携わる。2010年4月 味の素製薬株式会社(現:EAファーマ株式会社)に出向。輸液・栄養・透析研究所に所属し、輸液剤、透析剤の薬理研究に携わる。2012年4月 味の素製薬株式会社臨床開発部。輸液剤、消化器疾患用薬の臨床試験(治験)の実施、承認申請書作成に携わる。2014年7月 味の素株式会社健康ケア事業本部に所属。2016年7月 同アミノサイエンス事業本部ダイレクトマーケティング部R&Dグループ。2023年7月より同事業本部バイオファイン研究所マテリアル&テクノロジーソリューション研究所アミノインデックス・サポーティブケアグループ 兼 アミノサイエンス統括部品質保証・OE推進グループ健康学術チーム兼任となる。