

はじめに
『食育』は、生きる上での基本であって、知育・徳育・体育の基礎と位置づけられると共に様々な経験を通じて「食」に関する知識と「食」を選択する力を習得し、健全な食生活を実践できる人間を育てるものです。『食育』がいま重要とされる背景には、栄養の偏りによるやせや肥満、そしてそれらが原因と考えられる生活習慣病の増加があげられます。
また食の安全や信頼にかかわる問題や外国からの食糧輸入に依存する問題など、食を取り巻く環境が大きく変化しています。
こうした中で食に関する知識を身に付け、健康的な食生活を実践することにより、心身の健康を維持し、生き生きと暮らすために生涯にわたって「食べる力」=「生きる力」を育むことが重要になっているのです。
また、食育においては「おいしく食べる」ことが重要であり、これには5基本味(甘味、塩味、酸味、苦味、うま味)を理解し、味覚の重要性を認識することが欠かせません。
味覚は食材の選択や調理法、食事の楽しさに直結する要素であり、これを正しく理解することでより豊かな食生活を送ることができます。
今回(株)Gakkenと共同開発した食育ツール「5基本味体験キット」は、5基本味を一つ一つじっくりと味わい、確認し、記憶することにより、食べることへの興味を高め、おいしさとは何かを考え、実感できるようになることを目標としています。
現代の忙しい生活の中では食事が単なる栄養補給の手段となりがちですが、食べることは本来楽しむべき体験です。私たちの食育ツールが、学校や家庭、地域社会で広く活用され、「おいしく楽しく食べて健康づくり」に寄与できることを心から願っております。
監修者より
武庫川女子大学教育学部教育学科教授
藤本 勇二 先生
私たちが、おいしいと感じるときには、食べ物にまつわる物語をいただいています。味の種類には、5基本味と呼ばれる「甘味、塩味、酸味、苦味、うま味」があります。おいしいと感じるためには、5基本味に加えて、食品の香りや見た目も大切な要素です。本プログラムは、以下の2つの視点から一人一人のおいしい物語を語り合う内容となっています。
自分の体と対話する
5つの味を知る体験キットを使いながら簡単な実験をしたり、おいしさについて考えたりすることで自分の体と対話しながらおいしさのひみつを実感します。
多様性を大切にする
5基本味を使って身近な食べ物や飲み物の2味を自分なりに表現することで、おいしく感じることは人によって違うという多様性を大事にします。
おいしさを感じることは、自分らしさでもあるということを実感できるプログラムです。一人一人の感じ方や表現が違うからこそ、気付きや学びが深まります。そして問いが引き出されて探究が始まります。子供たちだけでなく大人も楽しめるプログラムです。
自分のおいしさを大切にするだけでなくて、友達のおいしさを大切にできることは、互いの良さを尊重し合うことになる、そんなことにも気付ける食育のプログラムとなっています。
5基本味体験キットとそれを使った授業のねらい
この授業には次のようなねらいがあります。
- 5基本味を体験することを導入として、味に関心をもつ。
- 5基本味(甘味、塩味、酸味、苦味、うま味)は生きていくうえで意味があることを理解する。
- 「おいしさ」について考え、私たちは、「おいしさ」を味覚だけでなく、五感で感じていることを理解する。
- 食べ物をおいしく食べることが重要だと認識し、元気(健康)に生きることにつながることを理解する。
教材の使い方
この教材の使い方やアレンジについては、「Ajico Report Vol.12」をご参照ください。兵庫県西宮市立鳴尾小学校の6年生を対象に実施された授業で、実際に活用した様子をレポートしています。
教材ダウンロード
指導書【PDF】
まずはこちらの「指導書」をご一読ください。このカリキュラムを使用した授業の授業への取り入れ方を具体的に紹介しています。指導計画と授業展開例、ワークシート記載例、オプション授業の展開例などが説明されており、どのように進めていったら良いか理解できるようになっています。
スライド【パワーポイント】
授業の流れに沿ってポイントをまとめたスライドを用意しています。スライドを映しながら授業を展開するとスムーズにでき、理解が深まります。ファイル形式はマイクロソフト社の「パワーポイント」なので、授業の目的や子どもの年齢に合わせて手軽に組み換えやアレンジも可能です。
ワークシート【PDF】
スライド5基本味とおいしさに関するミッションに加え、3つのワークが用意されています。体験を言語化することで表現力を養い、記憶に残りやすくします。「ワーク1」は、5基本味キットを体験しながら、5基本味が表す信号(シグナル)を記入します。「ワーク2」は、鼻をつまんでグミを食べる体験をして感じたことやわかったことを記入します。「ワーク3」は、5基本味を使ってお茶の味などを表現してみる体験の結果を記入します。