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Ajico News Vol.8

おいしく食べて未来の健康につなげる「子ども味覚力向上委員会」

※この記事の内容は公開当時の情報です

おいしく食べて未来の健康につなげる「子ども味覚力向上委員会」

●産学連携による新栄養コミュニケーション教育への取組み
●子ども向け減塩教育学習プログラム「にじいろの食育メニュー」
●身体を使って学ぶ「食育5基本味体操」
●「味比べOKOSHI」体験キットの開発
●「減塩してもおいしい!」体験で健康的な味覚習慣を

2023 Spring発行 Ajico News Vol.8より

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産学連携による新栄養コミュニケーション教育への取組み

産学連携による新栄養コミュニケーション教育への取組み

アジア諸国において「栄養不良の2重負荷」が急速に拡大し、特に塩分の過剰摂取は生活習慣病の大きな原因となっています。日本でも「過栄養」などの栄養課題を抱えており、その対策として、食習慣の基礎を作る子ども時代の食育が重視されています。飢餓と異なり、過栄養は、最終的には本人の主体的な食行動の結果として生じるものだからです。これまでの食育は、「栄養教育」と「調理教育」が中心でしたが、これらに加えて「味覚教育」も重要になってきます。

そこで、味の素(株)は、慶應義塾大学SFC研究所健康情報コンソーシアムと共同で、おいしさを科学的に楽しく学びながら味覚力を上げていくことで未来の健康を作る「子ども味覚力向上委員会」を立ち上げました。5基本味を言語やAR技術等を用いて体感し、楽しみながら脳にインプットさせて味覚力を養い、健康な食習慣を構築する。子ども自らの主体的な行動変容を目指した新しいアプローチの栄養コミュニケーションの開発に取組んでいます。

慶應義塾大学SFC研究所健康情報コンソーシアム ▶

子ども向け減塩教育学習プログラム「にじいろの食育メニュー」

子ども向け減塩教育学習プログラム「にじいろの食育メニュー」

調査によると、児童の好きなメニューは塩分と油分の多いハンバーグやラーメンなどでした。児童期は、味覚の形成において重要な時期。塩分だけでなく、5基本味を中心としたおいしさの感覚を身に付け、味覚の仕組みや味の役割を理解することは、生涯にわたる健康作りにつながります。

「にじいろの食育メニュー」は、減塩でも満足できる名前も見た目も可愛いメニューです。児童期1食あたりの食塩摂取量が2.5g未満であることを知り、5つの味をよく味わい、食材のもつ美しい色を活かした盛り付けをしながら調理する体験を通して、子どもたちがおいしく食べる習慣を身につけていくことを目指しています。

子ども向け減塩教育学習プログラム「にじいろの食育メニュー」

身体を使って学ぶ「食育5基本味体操」

身体を使って学ぶ「食育5基本味体操」

「食育5基本味体操」は、甘味・酸味・塩味・苦味・うま味それぞれから感じる味わいを、表情やポーズなどの身体表現を使ってアクティブに学べるプログラムです。歌舞伎役者の中村橋吾さんに和モダンポーズをご指導いただき、ACD2022の会場ブースでも、来場者に体験していただきました。コロナ禍での非言語におけるコミュニケーション、年齢を問わないコミュニケーションとして活用できると好評でした。

「味比べOKOSHI」体験キットの開発

「味比べOKOSHI」体験キットの開発

“OKOSHI(おこし)”は1000年以上の歴史がある日本最古の和菓子のひとつです。この伝統的な和菓子を使って、日本初の「食育×科学×文化」の体験キット開発に挑戦しています。

おこしは「甘い」味だけではなく、さまざまな味のバリエーションを作ることができます。よく噛んで味わい、どんな味がするのか? どんな匂いがするのか? 周りの方々に伝えて、対話をする。

子どもから大人まで、「味比べOKOSHI」体験を通じて、食の文化や科学、味の感じ方について、気づきやコミュニケーションが生まれることを目指しています。みなさんなら、どのようなおこしを作って、どのように使いたいですか?

「味比べOKOSHI」体験キットの開発

中学校の「探究基礎」授業に「味比べOKOSHI」体験キットをご活用いただきました

お茶の水女子大学附属中学校の家庭科教諭である有友愛子先生に、探究基礎の授業の一環としてご活用いただきました。 生徒たちは、オリジナルスープを開発するシェフという設定で、当社の「味比べOKOSHI」を使って官能評価にチャレンジ。授業で体験した後、1セットを持ち帰って自宅で自身が授業で体験したことを伝えるというカリキュラムを実施しました。味覚に関するコミュニケーションにより自身の知識を深め、更に家庭を含めた行動変容へのきっかけ作りを目指しました。

中学校の「探究基礎」授業に「味比べOKOSHI」体験キットをご活用いただきました

「減塩してもおいしい!」体験で健康的な味覚習慣を

「減塩してもおいしい!」体験で健康的な味覚習慣を

味の素グループは1909年の創業以来、おいしく食べることも栄養も両方重要という明確なビジョンをもって企業活動に取組んできました。味の素グループの「おいしい減塩」が目指すのは、「うま味の活用による、おいしさを損なわない減塩の推進」です。しかし、減塩の推進は1社で達成できるものではありません。その手法もさまざまです。社会全体での減塩推進には、一人ひとりが減塩課題を認識し、その方法を理解し、主体的に行動する必要があります。主体的な行動変容を実現するためには、「さまざまな方法でおいしさを損なわない減塩が実現できること」を幼少期から体験的に学ぶ機会が重要です。

第8回アジア栄養士会議(ACD2022)で調理体験イベントを開催

第8回アジア栄養士会議(ACD2022)で調理体験イベントを開催

2022年8月に、アジア栄養士連盟加盟国のうち4か国の栄養関係者をお招きし、味覚力向上のカリキュラムで学んだ日本の子どもたちと一緒に調理体験イベントを開催しました。 体験を通して、うま味調味料を効果的に使用することで「おいしい減塩」が実現できることを実感いただき、参加者からは、「食文化には、宗教的な食の制約など異なる部分もあるが、うま味体験を通じて、味覚教育の重要性について共通認識をもてた」「自国でも開催したい」などの声も上がりました。

第8回アジア栄養士会議(ACD2022)で調理体験イベントを開催

【学会レポート】第69回 日本栄養改善学会学術総会

塩分チェックシート

2022年9月16~18日「日本栄養改善学会学術総会」が川崎医療福祉大学にて開催されました。いかに健康で長生きできるか。日本人に多いと言われている高血圧の予防には、減塩の食習慣が重要です。塩分の摂りすぎは、高血圧だけでなくその他の疾患の原因にもなります。

味の素(株)は、「健康寿命の延伸を目指した持続可能な減塩推進戦略」と題して、社会全体が減塩できる取組みの現状を、社会医療法人製鉄記念八幡病院理事長の土橋卓也先生にご講演いただきました。

総会では、自分の食塩摂取量を意識してもらうための「塩分チェックシート」や、日本高血圧学会が掲げた「食塩摂取6gを目指した6つの戦略」などの取組みについてご紹介いただき、誰もが健康になれる社会のために産官学で連携し、一般の方に啓発していくことの重要性について改めて認識する場となりました。

セミナーの詳細はこちらで公開しています! ▶