連載「食生活や意識の変化に管理栄養士・栄養士はどのように対応する?」第1回
【第16回 AMC調査~主婦の食生活意識調査(味の素グループ)より】
食生活に関与する女性の意識と食品利用・調理行動などの実態を把握し、商品開発と事業展開に役立てるために行っている味の素グループの「主婦の食生活意識調査-Ajinomoto Monitoring Consumer Survey-」(AMC調査)。2名以上世帯の主婦(20~79歳)約2,000人を対象に800問もの質問で構成されるこの調査は、1978年より調査開始、1982年以降3年ごとに実施しており今回で16回目を数えます。
今回、公益社団法人日本栄養士会「2022年度全国栄養士大会・オンライン」で、最新の調査結果を神奈川県立保健福祉大学・鈴木志保子教授に解説いただきました。管理栄養士・栄養士は、この膨大なデータから垣間見える食卓のリアルを知り、時代に合った、そして対象者に合った栄養指導が必要、と鈴木教授は述べています。
「あじこらぼ」では、この結果を全3回の連載形式でご紹介します。第1回の本記事は、「有職率の増加」「食事・料理づくりについて」をテーマにしたアンケート結果です。演題:女性の食生活や意識の変化に管理栄養士・栄養士はどのように対応する?
初出:2022年度 全国栄養士大会・オンライン
開催日・場所:2022年7月8日〜8月7日/オンライン
01 有職率の増加
2000年に24%だったパート・アルバイトが2021年には42%と倍増しました。20~60代すべての年代で増加しており、子育て世代の20代〜30代の7割、40代〜50代は8割が働いている状況です。一方で、49%を占めていた専業主婦は27%に減少しました。
02 食事・料理づくりについて
「料理を作ることが楽しくない主婦」が増えている
料理が楽しくなくて苦手という人に、料理の楽しさを教えたり苦手を克服してもらうことが、対象者の栄養改善にとって効率の良い方法になるのか? その人の栄養改善はどう進めれば良いか? を改めて考える必要があると感じます。
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「非常に楽しい」「まあ楽しい」と回答した人は68%で、年々減少傾向。一方で「全然楽しくない」「あまり楽しくない」は32%と年々増加しています。
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「はい」「どちらかといえばはい」と回答した人は42%でした。とくに、ストレートに「はい」と答える人は年々増え、20年前の1.5倍に達しました。
料理にかける時間を減らすようにしている主婦が増加
便利な調理器具や調理サービス、宅配やお惣菜などの手段が増えたことで「時間を減らすことができるようになった」から、「料理にかける時間を減らしたい」と言える時代になったと捉えることができます。
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「そう思う、そうしている」と回答した人は34%と、40年前に比べ1.7倍に増えました。一方、「そうは思わない、そうしていない」は28%に半減。2018年から、減らす人、減らしていない人は逆転しています。
進む調理の時短
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「はい」「どちらかといえばはい」が71%と40年前から倍増しています。とくに、「はい」とストレートに減らしたいと答えた人は3倍に。一方、「いいえ」「どちらかとえいば、いいえ」と答えた人は27%、人と半減し、こちらも完全に逆転しています。
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全体の59%が10分以内で支度をしていると答え、そのうちの19%は5分以内です。つまり、私たち栄養士は10分以内で栄養状態を良くできるような朝食の提案を持っておかないと、対象者に役立つアドバイスにならないとも言えます。
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夕食は48%が40分以内で支度を行うと答えています。そのうち10分、20分という人もいますので、やはりこちらも短時間で栄養価の高い調理を提案していく必要があると言えます。
食事の支度が面倒な主婦が増加中
これだけ多くの主婦が面倒と捉えていることを踏まえて、私たちは「支度」に対する支援策を考えていくことも重要だと言えるでしょう。例えば、教育の中に調理スキルや効率的な手法を加えていくことで、調理への「面倒感」が減らせる可能性があるかもしれません。
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「はい」「どちらかといえばはい」が67%と、多くの人が食事の支度を面倒だと答えています。とくに、ストレートに「はい」と答える人は、この20年で倍増しました。
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20~40代主婦で、「はい」「どちらかといえば、はい」は75%と、4人のうち3人は面倒だと答えています。
献立を考える面倒感の増加
主食・主菜・副菜などを取り揃えた献立を考えるのが面倒なのか、何を食べるかを考えるのが面倒なのか、個々の声に耳を傾けて、解決を図っていく必要があると考えます。そもそも、個々でもっている献立の定義が、私たちが想定していることと全く異なる可能性があります。献立に対する誤解がないか、しっかり対象者から聞き取りながら、アセスメントを進めていくことが大切です。私たちが当然だと思っていることが当然でない時代が訪れているんだと、皆で共有していきましょう。
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「はい」「どちらかといえば、はい」が77%と、多くの人が献立を考えるのが面倒と感じています。とくに、ストレートに「はい」と答える人は、この20年で倍増しました。
Profile
鈴木 志保子(すずき しほこ)先生
公立大学法人神奈川県立保健福祉大学保健福祉学部栄養学科 教授