指標アミノ酸酸化法を用いた運動選手のたんぱく質・アミノ酸摂取の考え方
2019年7月28日、神戸国際会議場にて『全国栄養士大会』が開催されました。味の素(株)のランチョンセミナーその1では、指標アミノ酸酸化法を用いた運動選手のたんぱく質・アミノ酸摂取の考え方をご紹介しました。
座長:鈴木 志保子 先生(神奈川県立保健福祉大学 教授)
タイトル:アスリートは何をどれぐらい食べたら良いのか?(その1)
初出:2019年度全国栄養士大会
開催日・場所:2019年7月27日(土)〜28日(日)/神戸市(神戸国際会議場)
2019年度全国栄養士大会 その2「パラ陸上競技メダリスト・山本篤選手の栄養摂取法に鈴木志保子先生が迫る!」
最新の知見※1では、筋トレ時は1日2.2g/kg、持久トレーニング時は1日1.8g/kgの摂取を推奨
アスリートのたんぱく質摂取推奨量は、主に1980年後半から1990年前半、「窒素出納法」を用いた結果をもとに1日1.2g/kg程度と設定されてきました(※持久系アスリートの場合)。しかし近年、窒素出納法はたんぱく質の要求量が過小評価される可能性が指摘されています。2000年代になって開発された「指標アミノ酸酸化法」(IAAO法)は、呼気のスポット採取で短時間かつ簡便に測定ができる方法です。
この方法を用いてたんぱく質摂取推奨量を再評価したところ、旧来に比べて約30~50%も多く摂取する必要があることがわかってきました。
0.8g/kgのたんぱく質にBCAAを添加すると推奨量の1.8g/kgとほぼ同等の栄養価に
アスリートには旧来の定義より多くのたんぱく質が必要であることがわかってきましたが、たんぱく質なら何でもいいというわけではありません。皆さんご存知の「桶の理論」で考えると、たんぱく質は量だけでなくアミノ酸組成、特にパフォーマンスの回復を促すBCAA※2(分岐鎖アミノ酸)は重要なアミノ酸といえます。
トップアスリートは過酷な運動によって、トレーニング後に食欲が落ちることが多々あります。その状況でより効果的に栄養補給をするためには、たんぱく質の「質」を改善する必要があります。最新の研究では、0.8g/kgの卵たんぱく質にBCAAを0.2g/kg添加するだけで、推奨量である1.8g/kgのたんぱく質を摂ったときとほぼ同等の栄養価になることがわかっています。
BCAAは食品たんぱくを構成するアミノ酸の中でも、わずか35%程度しか含まれません。必要なアミノ酸を食事のみから摂取するのは、食欲が落ちているアスリートには困難な場合もあります。そのような時に、サプリメント等でBCAAを摂取しアミノ酸の組成を整えることで、アミノ酸の利用度は向上するわけです。
1日のどのタイミングで、どれくらいのたんぱく質を摂るかも、アスリートにおいては重要です
1日80gのたんぱく質を、どういう割合で分けて食べると筋肉をつくるのに最適かを調べた研究があります。これによると、20gを4回、間隔をあけて摂る方法が最も効果的という報告でした。80gのうち40gを2回に分けた場合では、1回の摂取量がやや多く、筋肉をつくる以上に燃えてエネルギー源になってしまいます。逆に10gを8回摂るパターンでは、1回10gだと筋肉をつくる刺激には足りないという結果になりました。
このデータに基づいて、味の素株式会社では日本代表選手のサポートを実施しています。ナショナルトレーニングセンターでの強化合宿中は、20g以上のたんぱく質を3食バランスよく食べ、補食で必須アミノ酸とBCAAを10g以上摂るということをしています。これによって「タイミング」「量」「質」を意識した栄養サポートが実現しています。
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