セミナーレポート

2019年度全国栄養士大会 その2

パラ陸上競技メダリスト・山本篤選手の栄養摂取法に鈴木志保子先生が迫る!

※この記事の内容は公開当時の情報です

パラ陸上競技メダリスト・山本篤選手の栄養摂取法に鈴木志保子先生が迫る!

現役パラ陸上競技選手が語る、たんぱく質の効率良い摂取法とは?

2019年7月28日に開催された『全国栄養士大会』のランチョンセミナーその2にて、パラ陸上競技メダリストの山本篤選手と、公認スポーツ栄養士でもある鈴木志保子先生とのトークセッションが行われました。37歳ながら2019年5月にも自らの日本新記録を更新し、世界記録にも迫る勢いの山本篤選手。日ごろから心がけている食事・栄養・補食の用い方などについてご紹介いただきました。

演者:山本 篤 選手(パラリンピック陸上競技メダリスト)
座長:鈴木 志保子 先生(神奈川県立保健福祉大学 教授)
タイトル:アスリートは何をどれぐらい食べたら良いのか?(その2)
初出:2019年度全国栄養士大会
開催日・場所:2019年7月27日(土)〜28日(日)/神戸市(神戸国際会議場)

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2019年度全国栄養士大会  その1「アスリートのたんぱく質摂取量が足りない!?~適正量と効果的な栄養補給とは~」

山本 篤 選手(パラリンピック陸上競技メダリスト)

食事のルーティン化でコンディションを自己管理

鈴木志保子先生(以下、鈴木):1日の食事はどのような状況ですか?

山本 篤選手(以下、山本):朝食は必ず、パン、ヨーグルト、フルーツ、コーヒー。1 年365日のうち300日は同じものを食べます。

鈴木:なぜこのメニューで固定しているのですか?

山本:海外遠征でも必ず手に入る内容だからです。時差があっても、この朝食を食べればお通じがくる体になっています。おかげで、時差ボケが数日で調整できます。いつでも自分のコンディションを体感できるように、もう何十年も朝食をルーティン化しているのです。

鈴木:昼食、夕食にはどんなこだわりがありますか?

山本:昼食はトレーニング先の大学で、学生食堂の定食が大半ですね。夕食は、好物の白いご飯は必須。あとはみそ汁、サラダ、主菜、副菜を妻に作ってもらっています。どんぶりものは申し訳ないけれどNG。親子丼をつくるなら、ごはんと具を分けてとお願いします。

「年齢の壁」を栄養摂取の工夫で乗り切る

鈴木:山本選手は今年37歳。多くのベテラン選手と同じく、運動量を増やしてパフォーマンスを維持されているのでしょうか?

山本:そうですね。あとは、体重のコントロールを特に厳格にしています。トレーニングの量は落とせませんから、食事を控えるしかない。昔はどんどん食べていましたが、年齢を重ねたいまは、栄養をしっかり摂って体を維持するためにアミノ酸の補食を始めました。

鈴木:私もアスリートのサポートをしていますが、食事では限界があるのですよね。食べ過ぎるのはよくないので、効率が重要ですね。

山本:僕は空腹でトレーニングをしたくないので、まずゼリーを飲んでからトレーニングを始め、終ったら素早くたんぱく質を補給するためアミノ酸のサプリメントを活用しています。

鈴木:アスリートのサプリメントの使い方は理にかなっていますよね。選手に負担がかからないよう、加藤先生のような専門家や私たち公認スポーツ栄養士、管理栄養士や栄養士が伴走して、食事の指導だけでなくサプリメントもおすすめしていく時代になりました。

山本:僕は大学でスポーツ栄養学を学んだので、専門家のアドバイスを自分なりにアレンジして取り入れています。ここまで長く競技を続けてこられたのは、栄養学的な理想論だけでなく、自分自身がおいしく食べられるようアレンジをしてきたことと、おいしく食べられる環境 をみなさんが手助けしてくださったことが大きいですね。

見ごたえ十分、迫力満点のパラスポーツ

鈴木:義足はスポーツ用でも3kg はあるとか。とても重いのですね。スポーツ用と日常生活用とで、義足の形が違うのも驚きです。

山本:最も大きな違いはかかとですね。日常用は歩くためにできているので、かかとがついていて靴が履けます。走るときにはかかとを使わないので、スポーツ用の義足はかかとがありません。カーボン素材がたわむ反発をうまくもらって走るのです。

鈴木:パラ競技の走り幅跳びは、滞空時間が長くて見とれてしまいます。

山本:それも反発のおかげですね。健常な足では、同じ助走スピードでパラの記録は出せません。義足は反発があるため踏み切り後にスピードが落ちにくく有利なのです。その分、見ごたえがあるはずです。

鈴木:パラスポーツの面白さがもっと周知されることを期待しています。プロになられた山本選手を、今後も応援させてくださいね!

山本 篤 選手(パラリンピック陸上競技メダリスト)
歩行用の 義足(写真左)と スポーツ用の 義足(同右)

ランチョンセミナーを終えて(鈴木先生からひとこと)

鈴木 志保子 先生(神奈川県立保健福祉大学 教授)

管理栄養士・栄養士がスポーツの世界で活躍するために、アスリートのたんぱく質摂取分野において最新の知見を持つ加藤弘之先生と、現役のパラリンピック・メダリストである山本篤先生にご登壇いただきました。

たんぱく質の効率のよい摂取には、量、質、タイミングの3つが重要であることを深く理解できたのではないでしょうか(鈴木志保子先生)。

2019年度全国栄養士大会  その1「アスリートのたんぱく質摂取量が足りない!?~適正量と効果的な栄養補給とは~」