セミナーレポート

第22回日本病態栄養学会年次学術集会

味覚・嗅覚障害と食事量減少への取り組み〜QOLを向上させる食事の工夫とは?〜

堤 理恵 先生(徳島大学大学院医歯薬学研究部代謝栄養分野講師)
2019年06月11日
※この記事の内容は公開当時の情報です

味覚・嗅覚障害と食事量減少への取り組み〜QOLを向上させる食事の工夫とは?〜

がん患者の味覚・嗅覚障害による食事量の減少は臨床での大きな課題。
うま味を活用した食事の工夫でQOLの向上を!

2019年1月11日~13日、パシフィコ横浜において『第22回日本病態栄養学会年次学術集会』が開催されました。味の素(株)は『臨床におけるうま味の活用~味覚・嗅覚障害の現状と食を通じたQOL向上への取組み~』と題し、ランチョンセミナーを共催。座長に桑原節子先生(淑徳大学)を迎え、堤理恵先生(徳島大学大学院)にご講演いただきました。

演者:堤 理恵 先生(徳島大学大学院医歯薬学研究部代謝栄養分野講師)
座長:桑原 節子 先生(淑徳大学看護栄養学部栄養学科長)
演題:臨床におけるうま味の活用~味覚・嗅覚障害の現状と食を通じたQOL向上への取組み~
初出:第22回日本病態栄養学会年次学術集会
開催日・場所:2019年1月11日~13日/横浜市(パシフィコ横浜)

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臨床におけるうま味の活用
~味覚・嗅覚障害の現状と食を通じたQOL向上への取組み~

堤 理恵 先生(徳島大学大学院医歯薬学研究部代謝栄養分野講師)

最近のがん治療における化学療法採用の副作用のひとつとして味覚障害・嗅覚障害が生じています。味覚障害等で食欲が減退している患者さんは「食べたいもの、食べやすいものを食べる」というのが実態ですが、それだけでは十分な栄養摂取にはなりません。患者さんと一緒に食べられるものを探していく中で、一番受け入れやすいものは、うま味をベースにしたものだということが分かりました。一方、うま味を感じる受容体は、味覚障害が現れてくるのに従って減少していくのですが、うま味を摂取することによって増加することが実験でも分かってきました。また、化学療法をしている患者さんだけでなく、高齢者の方でもうま味を摂取することで受容体が増加することが確認されました。うま味を活用することによって食事をおいしく食べられるようになり、喫食率をアップさせ、QOLの向上につながると言えます。
★うま味物質としてグルタミン酸ナトリウムを使用しています。

味覚・嗅覚障害と食事量減少への取り組み〜QOLを向上させる食事の工夫とは?〜

味覚・嗅覚障害と食事量減少への取り組み〜QOLを向上させる食事の工夫とは?〜

がん患者さんの味覚・嗅覚障害に対してのエビデンスが少ない中、うま味を活用した栄養アプローチには多くのヒントがあると思います。

がん患者の味覚障害に伴うQOLの低下

がん患者の味覚障害の原因には、放射線治療により唾液の分泌が減少し口の中が乾燥する、抗がん剤治療で神経障害が起こり味覚の伝達がうまくいかなくなるなどが考えられます。また、食事量の減少による亜鉛の摂取不足や、薬剤による亜鉛の吸収阻害も味覚障害を引き起こす一因となります。さらに、嗅覚への影響も見られることから食事をおいしく感じることができず、体重の減少につながることが考えられます。

主な症状:

  • まったく味を感じない(味覚消失)
  • 何を食べても苦い(悪味症)
  • 水を飲んでも甘い(異味症)
  • 味噌汁なのに味噌汁の味がしない(味覚減退) など

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うま味を活かした食事の工夫で喫食率アップ!!

徳島大学病院のがん患者用メニュー「眉山食(びざんしょく)」として、だし茶漬け・だし巻き卵・焼きなすなど、だしをしっかりきかせた食事を提供したところ、それまで栄養剤のみであった患者さんが食事をとれるようになったという例が見られました。また、胃の全摘や味覚受容体の多い胃噴門部を切除した患者さんも、うま味の活用により、食事が食べられるようになったという例も見られました。

だしのうま味と柑橘類の酸味を活かしたドレッシングで食欲増進!

今回のランチョンセミナーでは、堤理恵先生が開発に携わった「ゆこう美味(うま)ドレ」を添えた徳島産わかめをご試食いただきました。このドレッシングは、徳島産の柑橘類“柚香(ゆこう)”※とだしのうま味で作りました。

※柚香(ゆこう):柚子(ゆず)の自然交雑種

「ゆこう美味(うま)ドレ」を添えた徳島産わかめ

「ゆこう美味(うま)ドレ」を添えた徳島産わかめ

味の素(株)は、長年にわたるうま味の研究を栄養サポートに活用し、「健康なこころとからだ」の実現に貢献します。