新しいサイトをオープンします!
多くの栄養士さん、管理栄養士さんは、日々レシピづくりや栄養指導のために、さまざまな情報を探しているのではないかという思いから、この度新しいサイトをオープンすることになりました。そこでみなさまの「知りたい」にこたえるサイトを目指すために、保健センター、学校、病院など、現場で活躍する栄養士さん、管理栄養士さんに集まっていただき、どんな情報があると便利なのか、どんなサイトが使いやすいのかなどについて、おうかがいしました。座談会に出席してくださったみなさん
Aさん:フリーの管理栄養士。レシピ本の制作や、企業向けのレシピ制作などで活躍中。保健センターでの栄養相談も行っている。妊産婦からお年寄りまで、幅広い方々への食に関する仕事を手がけている。
Bさん:給食委託サービスの会社に勤務。主として学校給食の栄養士として、調理も手がける。かたわら、フードコーディネーターや料理家としても活躍し、出張料理を手がけることも。食育を広めるための活動も行っている。
Cさん:都内の保健センターに勤務する管理栄養士。乳児健診に来るママたちへの栄養指導や、高齢者向けの嚥下指導などをはじめ、健診に来た方々への栄養指導全般を担当。
Dさん:元行政の管理栄養士。今は病院での管理栄養士として活躍中。患者さん一人ひとりへのこまやかな指導が難しい場合も多いが、少しでも力になれればと思っている。
Eさん:病院の管理栄養士として15年勤務している。途中で産休育休を取得したが、復帰して継続勤務している。病院全体の食事の管理や必要に応じて患者さんの栄養指導を行っている。
司会は味の素株式会社広報部・Kが行いました。
ネット情報利用の鉄則は「根拠、出典情報がしっかりしていること」
――ネット情報を業務に活かすとき、一番気をつけていることはなんですか?
A:その情報の出どころですね。ネットの世界は玉石混交ですし、専門家のページであってもエビデンスがないものも多いです。世の中で大人気の「カリスマ○○」などの記事でも、内容には首を傾げるものもあります。 ですから基本的には厚生労働省のサイトなど、国や行政が出しているものから情報を取るようにしています。
C:私も時々、講演や教室などのためにパワーポイントで資料を作ることがあります。そのときは、やはり信頼できる情報元からのものしか使わないですね。
たとえば、朝食の重要性を伝えるとき。文部科学省が関係している「早寝早起き朝ごはん」のページはよく参考にします。
B:そうですね。私も学校給食関係の情報なら、まず見るのは文部科学省のサイトです。
D:大手の企業が出している情報や、専門家が監修したり記事を書いていたりするサイトも参考にします。レシピなどを探すときはとくにそうですね。
一般の方が投稿するレシピサイトも見ますが、その後必ず確かな情報が掲載されているサイトを見て、素材や塩分などについて情報を絞り込んでいきます。
K:一般の方はレシピサイトなどを活用していますが、栄養士さんや管理栄養士さんが出す情報であれば、それだけが情報源になることはないわけですね。
全員:その通りです。
A:ただおいしいだけ、見た目がいいだけでは、私たちの場合はだめですね。
E:病状に応じた栄養バランス、年齢に対応したカロリー、さらに個人それぞれの状況に応じて考えなければならないので、不確かなことは絶対に言えないです。
K:逆に言えば、栄養士さんや管理栄養士さんからの情報は、きちんとした裏付けがあるものだということですね。
相手に寄り添った「具体的」な情報が欲しい
――どんなときに、どのような情報が必要ですか?
C:レシピです。ただのレシピなら自分でも作れるのですが、たとえば若いママ向けのレシピ作成のときに調べます。
栄養士にとっては簡単で良いレシピと思って紹介しても、ほとんど料理をしたことがない人には「難しい!」と思われることがあると気づきました。
若いママたちにとってハードルが低く、簡単で栄養バランスのあるレシピを作りたいときに、投稿サイトなどで若いママやその年代の人たちが作っているレシピを見ます。彼女たちの作り方や調理法を調べ、どんなレシピなら作ってもらえるか考えたりします。
B:私もよくレシピを調べます。とくになにか制限があるときはネットを活用しますね。
たとえば子どもの塩分摂取量の基準が低くなったとき、学校給食はその数値を反映させなければなりません。しかし突然塩分を減らすと、子どもに「おいしくない」「味が薄い」と言われたり、残菜が多くなったりします。
いかにして基準値を守りながらおいしいレシピを考えるか? こんなときには「減塩の工夫」をネットで調べますね。
でも〈減塩〉というキーワードでは調べないかな。より具体的に早く結論にたどり着くために、〈だし〉で調べる。または、食材の合わせ方で塩を減らしてもおいしくいただける料理があるので〈減塩〉〈食材の合わせ方〉で検索するといった具合です。
K:減塩は重要項目ですが、検索ワードはストレートに〈減塩〉ではないのですね。
E:ネットでは、視覚的に分かる情報も欲しいです。たとえば「成人男子が1日に必要な野菜の摂取量」は、文献にも出ていますけど、ネットが重宝なのは、目で見てすぐ分かること。
一般の方は「●グラム」だとどのくらいの分量かピンときません。画像できゅうり半分、ブロッコリー小皿にこのぐらい......など、目で分量を把握できると、患者さんにも分かりやすいんですよ。
C:確かにビジュアルの情報って大事ですね!
私が「こういう情報があったらいいのに」と思うのは、食品の焼き縮みなんですよ。とくに冷凍食品の調理前と調理後のギャップ! 冷凍されているときのグラム数で計算すると、調理したあと、お皿に載せるとこんなにショボくなっちゃうのというぐらいにすご〜くちいちゃくなる(笑)。その比較画像があったらいいのにと思います。
よく動画で「やってみた」系のもの、ありますよね。あんな風に、魚は網で焼いたらどうなる、コンベクションオーブン(対流式のオーブン)ならどうなる、何度で揚げるとどのぐらい縮む......というような比較画像が見たい。
K:それは動画でもできそうですね!
より具体的なキーワードを入れている
――検索するときのコツはありますか?
D:大項目の検索は、いらない情報が大量に混ざるので行わないです。大項目というのはたとえば〈離乳食〉とか〈ダイエット〉とか〈在宅の食事〉とか。項目が大きすぎて、不必要な情報まで拾ってしまう。
検索は言葉を掛け合わせたり、もう一段階踏み込んだ、中項目や小項目で検索することで絞り込み、欲しい情報に近づくようにします。
A:そうですね、〈妊娠期の栄養〉という言葉では検索しませんね。検索するとしたら〈葉酸〉で調べる。
C:具体的な病態名や栄養素と<食事摂取>を掛け合わせた検索など、絞り込んで検索しますね。
あと栄養指導のとき、患者さんから「高齢になるとビタミンDをとったほうが良いと聞いたのだけど、何を食べればよいですか?」と聞かれたときに、どんな食材にビタミンDが入っているかを調べたりはします。
A:聞いたことのない病名とか、用語などを言われたときはネットで調べることが多い。早く答えにたどり着けます。
写真やグラフなどわかりやすいビジュアル情報
――資料作成のときに役立つのはどんな情報?
C:たとえば「朝食の重要性」というテーマの講演で「朝食を食べる子どもと食べない子どもでは成績に差が出ます」という話を盛り込むとき、「どのぐらい違いがあるのか」という比較を言葉ではなくグラフで出したいんです。言葉で説明するよりズバッと伝わりますから。だからグラフや図で示された情報が載っていると、とても参考になりますね。
E:私の現場で言うと、患者さんに栄養指導をする際に、目で見て分かるものが使いやすいですね。たとえば、「アルコールの種類別カロリー」のデータが、写真や絵で比較できるようになっているといいなあと思います。お酒を控えなければならない患者さんに渡す資料に、ビールならコップ○杯、日本酒ならおちょこでどのぐらいで何カロリーというのがひと目で分かる写真や図が載っていると、とっても分かりやすいですよね。
C:それはいいですね。あと「画像検索」もとても役立つんですよ。たとえば〈腎臓病の病児食〉というキーワードを入れて画像検索します。腎臓病は食べられるものがとても制限されるし味も薄いので、せめて見た目がおいしそうな献立を作りたいですから。
B:私はSNSを結構活用していますよ。とくにInstagramは非常に役に立ちます。
K:どんな風に使ってらっしゃるんですか?
B:食育の一環で、郷土料理について調べるとき、Instagramで#(ハッシュタグ)をつけて料理名で検索するんです。生産者の方の名前を知っているときはその名前を入れて検索します。すると料理や素材の写真がバーっと出てきます。
作り方を知りたいときはコメントを入れると、返信で教えてもらえたりします。
最近は生産者の方も積極的に投稿していますので、SNSがきっかけで生産者の方とつながって、会いに行くこともあるんですよ!
K:なるほど!一般的なブラウザでの検索とはまた違う使い方ができますね。
とにかく現場、現場で実践的に使える情報を!
――新しいサイトへの期待や要望をお聞かせ願えますか?
A:大きな病院にいる栄養士さんだと、学会の最新情報や論文検索など、よりサイエンスに基づいた情報をチェックしているのではないかと思います。
一方、在宅栄養士や行政など地域に根差した組織にいる栄養士さんは、そうした情報はよほど時間がないと見ないと思います。
とにかく、自分の現場で向き合っている患者さん、住民の方に役立つ情報が一番欲しい。
D:レシピにしても、「この料理をこの分量で作ってください」という言い方ではなく「こういう材料を使うといいですよ」など、できるだけ作りやすく、やりやすい提示の仕方を考えないと、ご自宅に帰られてから続かないんですよね。そういう、より具体的で実際的な情報ですね。
C:とにかく、向き合っている方々に分かりやすく、かつ根拠がしっかりしているものがあればぜひ使いたいです。
職場環境によっては、業務時間中にPCでネット検索ができないこともあるようですが、それでもみなさんいろいろなサイトを利用されていることが分かりました。
とくに「レシピを作るとき」や「患者さんや住民の方に情報を手渡すとき」、新しい言葉(病名、症例、専門用語)などに出会ったときに検索されているようです。また、「根拠、出典情報がしっかりしていること」「視覚的に分かりやすいもの」が求められていることが分かりました。
いただいた声をしっかり受け止めて、将来的には皆さんのニーズにお応えできるサイトに育てていきたいです!