セミナーレポート

味の素株式会社主催オンラインセミナー

アミノ酸はいかに東京2020日本人アスリートを支えたか?
第1部 アミノ酸の働きがアスリートを支えた

松田 丈志 氏(競泳元日本代表)
※この記事の内容は公開当時の情報です

アミノ酸の働きがアスリートを支えた/元競泳日本代表 松田 丈志 氏

昨年、コロナ禍で開催された東京2020オリンピック・パラリンピック。オリンピックでは58個(うち金メダル27個)、パラリンピックでは51個(同13個)という輝かしい成績が記録されました。そんな東京2020の熱気がまだ冷めやらぬ9月下旬、当社主催により「スポーツ栄養とアミノ酸」と題したメディア向けオンラインセミナーが開催されました。

過去、五輪に4大会連続出場して4個のメダルを獲得した競泳元日本代表・松田丈志氏、東京2020代表チームの栄養サポートを行った日本スポーツ栄養協会理事長・鈴木志保子氏らの講演、スポーツ文化ジャーナリストの宮嶋泰子氏の司会によるパネルディスカッションが開催され好評を博しました。

そこで語られた、日本人オリンピアン・パラリンピアンの活躍を支えたアミノ酸のパワーやスポーツ栄養戦略、そして東京2020の逸話を紹介します。

演者:松田 丈志 氏(競泳元日本代表)
演題:アミノ酸の働きがアスリートを支えた
初出:味の素株式会社主催オンラインセミナー「アミノ酸はいかに東京2020日本人アスリートを支えたか?」
開催日・場所:2021年9月21日(火)/オンライン

PDFダウンロード

競泳元日本代表 松田 丈志 氏
競泳元日本代表 松田 丈志 氏

東京2020大会はたいへんな状況の中でしたが無事に終了しました。獲得したメダル数からわかるように、日本選手の活躍は本当に素晴らしかったと思います。私はアテネ、北京、ロンドン、リオと4大会に出場し、オリンピック・パラリンピックをしっかり観戦できたのは今回が初めてだったのですが、数々の感動的なシーンを見ることができました。

このような日本のアスリートの躍進を支えてきた拠点として、JISS(国立スポーツ科学センター)とともに、味の素(株)さんが国内2カ所に開設したナショナルトレーニングセンターが挙げられます(図1)。私も味の素ナショナルトレーニングセンターのウエストを活用して日々トレーニングをしていました。さらに2019年開設のイーストは、パラアスリートのトレーニング環境がより充実した施設だと聞いております。

競泳元日本代表 松田 丈志 氏

そして、日本の五輪参加選手には「JOC G-Road Station」というもう一つの支えがあります。これは、日本オリンピック委員会がリオ大会から設置するようになった、日本人アスリートを栄養面から戦略的にサポートする拠点です。東京2020では選手村ダイニングの食事の質の高さが話題になりましたが、それとは別に設置された「JOC G-Road Station」では、トレーニングや試合のタイミングに合わせて、アミノ酸の働きをフル活用した食事を摂ることができました。

では、私自身がアミノ酸をどのように活用して競技と向き合ってきたかをお話しします。

28歳で挑んだロンドンでは、個人の200メートルバタフライで銅メダルを獲得し、リレーでは日本チームとして銀メダルを獲得しました。その時点のパフォーマンスは非常に高く、いま振り返ればあの頃が競泳選手として最も脂が乗っていた時期だと思います。それから4年後のリオは32歳です。当時、32歳で五輪の競泳に出場した選手はまだいませんでしたので非常に悩みました。1年悩んだ末、覚悟を決めて周囲に「もう一度チャレンジしたい」と伝えました。ただ、やはり4歳の年齢を重ねるわけですから、リカバリーは遅くなり、同じトレーニングをしていても体ができてこないという感覚を拭えませんでした。リカバリーに時間がかかるということは、強度の高いトレーニングができる頻度が減ることを意味します。そこで、アミノ酸をフル活用し体を作ることにしました(図2、図3)。

味の素ナショナルトレーニングセンター「ウエスト」と「イースト」

味の素(株)さんのサポートを得て、リオの前には高地トレーニングに2回行きました。合宿中は十分な食事を摂り、タンパク質は2.5g/kg/日を摂取しました。ところが、それでも必須アミノ酸は充足されていないというデータが示され、食事に加えてアミノ酸を1日20g摂取し、トレーニングキャンプを続けました(図4)。

リオ2016大会(本番時32歳)/リオ2016大会(本番時:32歳)に向けて

そのように緻密かつ戦略的な強化合宿をこなしていった結果、リオでも4 × 200メートルのフリーリレーで銅メダルを獲得することができました。リオを最後に選手生活から引退しましたが、現在も味の素(株)さんとともにタンパク質、そしてアミノ酸に関する研究を行っています。

また個人的には、新たな「自分超えプロジェクト」として、トライアスロンに挑戦しています(図5)。これまで競技の世界のアスリートとして育てられ支えられてきた人間として、これからはスポーツを長く続ける楽しさを伝えていきたいという思いがあります。ただ、リオからさらに5歳の年齢を重ねているわけですから、仕事とトレーニングとで非常に体に負担がかかります。ですから現在もアミノ酸を活用しながら、限られた時間の中でリカバリーと体づくりに励んでいます。

私と同じように、趣味やスポーツ、仕事などで年齢を感じることのある方もいらっしゃるのではないでしょうか。そのような時にアミノ酸を上手に活用することで、元気に過ごせる時間を増やしていただければうれしく思います。

リオ2016大会(本番時32歳)/リオ2016大会(本番時:32歳)に向けて