セミナーレポート

NSCAジャパンS&Cカンファレンス2019

NSCAジャパンS&Cカンファレンス2019 レポート

荻原 次晴 氏(元スキー・ノルディック複合日本代表)
鈴木 志保子 先生(神奈川県立保健福祉大学教授)
※この記事の内容は公開当時の情報です

NSCAジャパンS&Cカンファレンス2019 レポート

「NSCAジャパンS&Cカンファレンス2019」では、NSCAの資格認定者の指導力向上のため、著名かつスポーツの最前線で活躍している講師によるさまざまなワークショップや講習・講演会を開催。当社は本イベントに協賛、第1部は神奈川県立保健福祉大学教授の鈴木先生の講演、第2部は元スキー・ノルディック複合選手の荻原次晴氏と鈴木先生のトークセッションを実施しました。これにより、アスリートと常に接しているトレーナーに栄養摂取とサプリメントの活用を考える働きかけとなる良い機会となりました。
演者:荻原 次晴 氏(元スキー・ノルディック複合日本代表)、鈴木 志保子 先生(神奈川県立保健福祉大学教授)
演題:スポーツ栄養学に基づく正しい栄養摂取とサプリメントの活用〜アスリートの栄養サポート実践、実体験を通じて〜
初出:NSCAジャパンS&Cカンファレンス2019
開催日・場所:2019年12月15日/神戸市

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スポーツ栄養学に基づく正しい栄養摂取とサプリメントの活用
〜アスリートの栄養サポート実践、実体験を通じて〜

鈴木 志保子 先生(神奈川県立保健福祉大学教授)

食事は酸素と同じ「生きるために必要な化学反応の源」です

「私たちは何故食べなくてはいけないのか。」それは、私たちが化学反応の連続で生きているからです。化学反応の連続で代謝を行って生きている。「食べること」は化学反応の材料の提供と言えます。化学反応の材料がたくさんあったとしても、私たちは必要な分しか作りません。余分に材料を入れた場合は、余った材料を違うものに作りかえて体に蓄積したり、排泄したりします。化学反応のために過不足なく材料を提供する方法論の1つとしてバランスよく食べるのです。

毎朝、体重測定をすることで、適正量を知る

バランスの良い食事には2つの柱があります。1つは「どのような料理・食品・食材を食べるか」。(公財)日本スポーツ協会スポーツ食育プロジェクトでは、食事の構成として「主食」、「主菜」、「副菜」2品、「牛乳・乳製品」、「果物」の5つを示しています。例えば、カレーライスの場合は、主食と主菜と副菜が入っているので、不足している副菜1品と牛乳、果物を加えればバランスの良い食事になります。難しいのは、2つめの柱である「どのように自分の適正量を食べるか」です。いくらバランスが良い食事であっても、自分の適正量以上食べれば過剰摂取になり、足りなければ低栄養となります。日々の身体活動、環境、心理面、消化・吸収などに使うエネルギーは正確な計算ができないことから、私たちの活動量と食べる量の出納(代謝の状況)は、結果として評価することしかできません。これを確認するには、毎朝排尿後に体重を測定することで日々の変化から確認することができます。

新陳代謝を促すために、バランス良く食べる

「バランス良く食べること」は今を生きるためであることはもちろん、「新陳代謝を良好に行う」ためでもあります。人の細胞(毛髪や爪、歯以外)は、少ないもので10日くらい、長くて150日から180日で作りかえられます。筋肉を例に挙げると60%が16日、40%が100日で新陳代謝され、約3カ月で全身の筋肉が作りかえられます。つまり、2週間練習を休んだら60%の筋肉が練習を休んだときの刺激を受けていない状態で作りかえられることになり、休む以前のパワーが発揮できなくなります。さらに、偏食や欠食をすると全身の細胞で新陳代謝が十分に行われない状況になります。「食べないと損をする」...特にアスリートはパフォーマンスが落ちるなど結果にでてしまうので、新陳代謝を良好にするバランスの良い食事を毎食摂ることはとても大切なのです。

バランスの良い食事

バランスの良い食事

スポーツ栄養学の意義を考える

スポーツ栄養学は病気の回復や予防のためだけではありません。アスリートの場合、パフォーマンス向上のために、練習や試合に合わせたエネルギーや栄養素の補給が必要となります。スポーツ栄養士は、さまざまなエビデンスを頭に入れて、試合や練習の開始時刻、継続時間・強度やアスリートの体調等を考慮し、栄養管理を行っています。それは、食事のメニューを調整するだけではなく、より深い知識と経験が必要になるのです。また、活動量が多いにもかかわらず、必要量を食べられないアスリートもいます。この理由として「食べる量に限界がある」「運動中は交感神経が優位に立つため、消化・吸収が効率よくできない」「運動時間が長いほど、消化・吸収を効率よく行う時間が短くなる」という3つがあげられます。これらを放置しておくと栄養不足となり、体調不良や怪我にも繋がります。このギャップを埋めるために、食事はエネルギーを優先させ、不足しがちなビタミンとミネラルはサプリメントで補う。たんぱく質などは、吸収しやすいアミノ酸で摂るなど、状態や状況に合わせた栄養管理を行うことが私たちスポーツ栄養士の仕事です。ただしジュニアアスリートはサプリメントを飲まなくてはいけないほどの身体活動をしてはいけません。

タイミングを考えてアミノ酸を摂取する

さて、たんぱく質はどれくらい摂取すればいいのかというと、普通の生活をしている人で、体重1㎏あたり0.8~1.0gが目安となります。たんぱく質を過剰に摂取すると分解して、尿素にするために、腎疾患、肝臓に負担がかかることから注意が必要です。アスリートの場合は、運動前後にたんぱく質を取り入れる、また運動中に必要に応じてアミノ酸を摂取します。特に、消化された状態のアミノ酸を、タイミング良く適正量摂取することが大切です。また、サプリメントであれば、アミノ酸の種類を選ぶことができるので、特性を生かした摂取ができます。

たんぱく質って1日でどれくらい必要なの?

実はたんぱく質源となる食品はたくさんあります

荻原次晴氏 × 鈴木志保子先生 トークセッション

荻原次晴氏と鈴木志保子先生

「アミノバイタル®」との出会いは1998年の長野オリンピックの直前に味の素(株)さんがサンプルを持ってきてくれたのが最初でした。現在は登山時の栄養補給に「アミノバイタルR」を利用しています。アミノ酸を選択して飲める時代がきたことに驚いています。 私がアスリートだったとき、双子の兄の健司(荻原健司氏)にいつも間違われるという苦い思いがあったから、みんなに自分の存在を知ってほしい、アイデンティティを取り戻したいというのがモチベーションになっていました。つまり、自分の尊厳を取り戻すため、ですね。自分の尊厳まで突き詰めないとオリンピックにはたどり着けない。どんなにセンスがあっても運動神経が良くても、最後は自分自身の根性だと思います。