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Ajico News Vol.2

唾液分泌を促進する“うま味”で高齢者の味わう力を取り戻す!

2019年03月29日
※この記事の内容は公開当時の情報です

唾液分泌を促進する“うま味”で高齢者の味わう力を取り戻す!

・見落とされてきた“うま味”の感受性低下
・味わう力を取り戻す、うま味の活用

2018 Spring発行 Ajiconews vol2 より

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味を感じるために必要な器官・機能とは?〜加齢に伴う主な変化〜

味を感じるためには唾液が必要です。食事を食べる時によく噛むと味物質が唾液に抽出されます。この味物質が舌や口蓋にある味細胞に到達することにより味を感じているのです。また、唾液には口腔環境を整える成分が含まれています。しかし、味覚障害を持つ高齢者の多くは、唾液分泌量の低下、口腔内の乾燥がみられます。これらの対策として、唾液分泌を促すアプローチは、口腔環境を整え味覚障害を軽減する可能性があります。
味覚感受性の維持は「味わう力」を取り戻し、高齢者の健康長寿の鍵となります。

味を感じるために必要な器官・機能とは?~加齢に伴う主な変化~
※高齢者の味覚障害は加齢に伴う機能低下のほか、疾病や薬剤生の味覚障害が多い点も特徴としてあげられます。

味覚障害は、感覚障害だけではなく全身の健康に影響します

高齢者71名を対象に、甘味・酸味・塩味・苦味の味覚検査を行なったところ、約37%の方に味覚障害がみられました。しかし、そのうち約半数の方は、味覚の違和感を感じながらも味覚障害であると自覚できていない状況です(図1)。
また、味覚障害のある方は、無い方に比べ体調不良、食欲の低下、摂取食品数の減少も確認されています(図2)。

味覚障害の実態
自覚のない人が半数も!

高齢者の味覚と体調

検査では「異常なし」。見落とされてきた"うま味"の感受性低下

味覚障害のある方の多くは口が乾いています(図3)。唾液がゼロになると味を感じることができなくなります。
味覚障害にはさまざまな要因がありますが、4味の味覚は正常でありながら、うま味の感受性のみが低下している患者が16%も存在します(図4)。
しかしながら、味覚障害の検査は甘味・酸味・塩味・苦味の4味で行われ、うま味の検査は含まれていません。そのため見落とされてしまうのです。

味覚障害と唾液分泌量/味覚障害のうち、うま味感受性のみ低下の割合
高齢者の声や変化に注意しましょう! "味はわかるのにおいしくない""食べたくない""痩せた"時には、"うま味"の感受性低下を疑い、早期発見・早期治療することが重要です!

"うま味"で唾液分泌を促進! 味わう力を取り戻す

唾液腺は、味覚によって刺激され、唾液を分泌します。特にうま味は他の味よりも唾液分泌を促進し(図5)、うま味の感受性を高めます。
うま味成分であるグルタミン酸を多く含む「昆布だし」を口に含むなど、唾液をだすトレーニングをしたり、昆布だしのきいた料理を積極的に食べた患者は、10か月後に唾液の分泌量が標準値になり、うま味の感受性が改善されました(図6)。

味覚と唾液反射
うま味は酸味よりも、多くの唾液を分泌させ、長く持続します。

ある患者の治療前後での濾紙ディスク法による味覚検査結果
ある患者は治療後、うま味がわかるようになり、食欲がでて体重も増えました。唾液分泌促進のアプローチとして薬に頼らない、食事の工夫も重要です。