・見落とされてきた“うま味”の感受性低下
・味わう力を取り戻す、うま味の活用
2018 Spring発行 Ajiconews vol2 より
味を感じるために必要な器官・機能とは?〜加齢に伴う主な変化〜
味を感じるためには唾液が必要です。食事を食べる時によく噛むと味物質が唾液に抽出されます。この味物質が舌や口蓋にある味細胞に到達することにより味を感じているのです。また、唾液には口腔環境を整える成分が含まれています。しかし、味覚障害を持つ高齢者の多くは、唾液分泌量の低下、口腔内の乾燥がみられます。これらの対策として、唾液分泌を促すアプローチは、口腔環境を整え味覚障害を軽減する可能性があります。
味覚感受性の維持は「味わう力」を取り戻し、高齢者の健康長寿の鍵となります。
味覚障害は、感覚障害だけではなく全身の健康に影響します
高齢者71名を対象に、甘味・酸味・塩味・苦味の味覚検査を行なったところ、約37%の方に味覚障害がみられました。しかし、そのうち約半数の方は、味覚の違和感を感じながらも味覚障害であると自覚できていない状況です(図1)。
また、味覚障害のある方は、無い方に比べ体調不良、食欲の低下、摂取食品数の減少も確認されています(図2)。
検査では「異常なし」。見落とされてきた"うま味"の感受性低下
味覚障害のある方の多くは口が乾いています(図3)。唾液がゼロになると味を感じることができなくなります。
味覚障害にはさまざまな要因がありますが、4味の味覚は正常でありながら、うま味の感受性のみが低下している患者が16%も存在します(図4)。
しかしながら、味覚障害の検査は甘味・酸味・塩味・苦味の4味で行われ、うま味の検査は含まれていません。そのため見落とされてしまうのです。
"うま味"で唾液分泌を促進! 味わう力を取り戻す
唾液腺は、味覚によって刺激され、唾液を分泌します。特にうま味は他の味よりも唾液分泌を促進し(図5)、うま味の感受性を高めます。
うま味成分であるグルタミン酸を多く含む「昆布だし」を口に含むなど、唾液をだすトレーニングをしたり、昆布だしのきいた料理を積極的に食べた患者は、10か月後に唾液の分泌量が標準値になり、うま味の感受性が改善されました(図6)。