・なぜ強い? 若い女性の「やせ願望」と食卓の現状、食への意識 誤った「美しさの概念」と食への関心度の低下
・若い女性の「やせ」の影響は本人のみならず次世代にも影響
・適切なエネルギー摂取とバランスの良い食生活の重要性
2018 Summer発行 Ajiconews vol.3より
若い女性の「やせ願望」の背景を理解し、理想の体型への意識、「食べること」への意識を変えることが重要です。
スリムな女性がもてはやされるメディアの影響からか、私たちは日々「やせている=美しい」というメッセージにさらされています。
厚生労働省による国民健康・栄養調査の近年のデータにおいても、若い女性は他の世代と比べ、「やせ」比率が極めて高く、特に20代以下の女性の5人に1人が、「やせ」の状態にあると報告されています。
若い女性の「やせ」は、本人の将来の健康リスクを高めるだけでなく、不妊をまねくなど、次世代にも深刻な影響を与える社会的課題となりつつあります。しかし、日々の暮らしの中で、特に健康への問題を感じていない若い女性にとっては、見逃されがちな課題です。
もっとやせたい! 美しくなりたい! 「やせすぎ」を理想とする若い女性たち
日本ではBMI※が22のときの体重が、標準体重または適正体重とされており、最も病気にかかりにくく、健康維持に適した状態とされています。
しかし、厚生労働省の調査によると、20代の女性の理想のBMIはなんと19! さまざまな病気のリスクをはらむとされる「やせ(18.5以下)」に近い値が理想の値となっています。
また多くの若い女性が、自分は太っているという認識をしています。ゆがんだ理想の体型や「美しさの概念」が、本来やせる必要のない女性たちを過度なダイエットや偏った食生活に走らせ、エネルギー摂取不足や栄養バランスの低下を招いています。
※BMI(Body Mass Index、[体重(kg)]÷[身長(m)の2乗]とは肥満や低体重(やせ)の判定に用いられる指標。BMI18.5以下は低体重(やせ)とみなされる。
これが当たり前? 若い女性の食卓の現状と食への意識
30代以下の若い女性の、特に1人で食事をとる際の食卓をのぞいてみると、明らかに摂取エネルギーの少ない食事や、栄養バランスに問題のある食事が高頻度で見受けられます。また、インタビューを通じて、女性たちの食事摂取に対する基本的な知識不足も認められました。この状況を反映するかのように、若い女性のエネルギー摂取量は総じて低く、基準値との間に大きな乖離が生じています。
味の素(株)が行ったインタビューでは摂取カロリー不足を認識していない人が大多数いました。
●自分は事務職で動かないからそんなに摂らなくてもいい。
●多少足りない位で、死ななきゃいい。
(味の素(株) 2016年)
若年からの適正なエネルギー摂取と栄養バランスの大切さへの気づきを与えよう
若い女性の「やせ」は貧血や冷えだけでなく、骨量の増加が著しい10代後半から、筋肉量のピークを迎える20~30代女性が低栄養にさらされることで、将来のロコモティブシンドロームの発症や、発症年齢の低下をまねくとされています。
また、若年女性アスリートを対象とした調査により、無月経と低BMIの関係性(右グラフ)も明らかになりました。体重減少によって無排卵となり月経不順や無月経の状態になると、卵巣から分泌される女性ホルモン(エストロゲン)が低下します。低BMIによるリスクとしてアスリートだけでなく、一般の方にも同様の現象が発生する可能性が示唆されています。
さらに近年の疫学研究からも、若年期から妊娠期にかけての低栄養は、次世代の子どもの将来の生活習慣病リスクを高めるという見方が主流となりつつあります。 食習慣や健康状態は改善しようとしても急に変えられるものではありません。早い段階から適切なエネルギー摂取とバランスの良い食生活への意識を高め、習慣づけることが、女性本来の美しさと生涯にわたる健康、ひいては幸福を守るカギとなるのです。
「やせ」のリスクを十分に理解し、適切な食生活を送りましょう。